2008年5月
アリンガノ・マイス
去年4月、ハワイから日本へ行く”ホクレア号”と一緒に来ていた同型艇の外洋を航海できる帆走カヌー”アリンガノ・マイス”が、今度はあまり騒がれることもなくいつの間にか来ていて、舵の修理をしていました。
たまたま通りかかった時がパラオからヤップに向けての出航準備中で、そこに知り合いのパラオ人のマリスがいて、エンジンのない船なので港の外まで曳航していくと聞いたので同乗させてもらいました。

この日は5月には珍しく何日か前から天候が悪く、発達中の低気圧の真ん中で(翌日には台風2号になった)曳航して港を出てしばらくすると、私達の乗っているボートは外洋の大きな波に翻弄されてどこかにしがみついていないといけないのだけど、”アリンガノ・マイス号”は大きく揺れてはいるけど、こんな波はなんでもないとでも言うように悠然とはるか遠くのヤップを目指して進んでいきます。

ヨットのようには風上に向かっていく性能が良くない帆走カヌーでは、この風向きはヤップに向かう最高の風向きなのだけど、なにもこんな日にと思うのは我々だけで、彼らにとっては艇に対する信頼と自分達の自信があるのか、7,8歳位の子供も乗っていて皆楽しんでいるように見えます。

曳航ロープを放してからも私達のボートはゆっくりと見守るように1時間くらい少し後ろからついて行きました。
マリスの操縦するボートには他に4人のパラオ人が乗っていたのだけど、ずっと見つめている後姿には、毎日速いボートには乗っているけど外洋に出ることはなくなってしまった自分たちと違って、この荒れた海へ出て行く勇気ある人達に畏敬を込めて見送っているように感じました。

マリスは私達がヨットで日本から外洋を越えてきたことを知っているのだけど、私達のことも少しは尊敬して見ているのかなあ・・・