2009年1月
魔法のピンク色の洗剤



船は海上で長時間潮風や紫外線にさらされているので、陸上の建物などとは違った傷みや汚れがあって、日頃のメンテナンスが欠かせません。
ヨットでは居住スペースを広く取るためにエンジンは底の方で押し込められたような所にあり、メンテナンスをするのに上半身を逆さにして潜り込むようにしないと奥の方には手が届かなくて、体中が油だらけになってしまうこともあります。

いろんな種類の汚れがあるので、洗剤には以前から何でもあらゆる物を試して、今も船の棚には10種類位が並んでいます。
日本にいた頃に、深夜のテレビショッピングでよく登場する「シンプルグリーン」なども、こちらのスーパーでは安く一般的に売られているので、何種類かを買ってみたのだけど、テレビの実演のようには汚れが簡単に落ちることはなく、やっぱりこんなものかと感じたことも度々でした。
スーパーでは日本に比べて洗剤類の置き場の占める割合が多いようで、パラオ人は意外と洗剤好きなのかもしれません。
その中でも一般的なのは強烈な匂いのする「パインソル」と漂白剤の「クロラックス」で、パラオの人は所構わず大量に使っているので、通りかかった時に鼻の粘膜の敏感な私などはくしゃみ連発です。

そんな時、スーパーメカニックの具志堅さんにこれがいいよと教えてもらったのが、ピンク色した粉末の洗剤。
日本でも工場などで手洗い用に置いているところもあって、実際に手に付いた油の汚れがよく取れていたのだけど、特殊な物でパラオでは手に入らないと思っていました。
具志堅さんに教えてもらった、中国人のちょっと怪しげな小さなお店に行って身振り手振りで聞くと、うなずいて奥から出してきたのが25センチ四方のダンボール箱。
外側に簡単な中国語の印刷があるだけで、中身が輪ゴムで口を縛っただけのビニール袋に入っているのはちょっと不安を感じさせるのだけど、そのおばさんが「私はこれで油料理をした後でフライパンも洗う」と言うので、えっ・・と思ったけど箱をよく見たら自動車や鍋やフライパンの絵もあります。

成分は今もよく分からないのだけど、日本の工場でも手洗い用に使われていて肌にも悪くないくらいだから、最小限であれば海で使っても自然環境にはそれほど悪くないはず。
実際に使ってみると、普通の石鹸のようにぬるぬるしないし、泡立たないので流す水も少なくてすみ船では最適。
いろんな物に試してみて、油分は異常に早く分解するようだし、マジックペンのいたずら書き、木材のカビ、ステンレスの錆びも落とします。
手に付いたペンキは溶剤のシンナーでないと取れいと思っていたのが、肌に優しく取れてしまいました。
特別な汚れは今まで漂白剤のような物を使うしかなかったのに、不思議と思うくらいのこの万能洗剤は、もう船でも家の中でも欠かすことは出来ません。