2010年5月
ニワトリ小屋
私達の小さな農園は、アパートの隣の空き地の一部を借りていて、その反対側の一角には、フィリピン人が協同で住んでいる住宅が建っています。
その間にある土地は特に何も使われていなくて、いつの間にか誰かが植えたマンゴーや、ササップ、ノニの木などが大きくなって育っています。
パラオでは法律で、空き地でも必ず草刈をしなければならなくて、管理している人が約1ヶ月毎に草刈機で刈り取っているので、短い丈の雑草が放し飼いのニワトリの丁度良い遊び場になっています。

車で走っていると、犬やニワトリが道路をよく横切っていて、直前まで逃げようとしません。
犬やニワトリは放し飼いで行動範囲も広いようで、生んだ卵はどうなるのだろうとか、ヒヨコは猫にでも襲われることがあるのか、いつの間にか数が減っていたりしているので夜は樹の上が寝床なのかなとか、飼い主はいるのだろうけどよくわかりません。

コケコッコーの鳴き声も、夜には何処かへ帰るのか遠くで聞こえるだけなので気にしていなかったのに、ある日突然、明け方4時半にけたたましい鳴き声で起こされて、明るくなってから見てみると、空き地にいつの間にか作った小さなニワトリ小屋が出来ていました。
小さな小屋はそれ自体がスピーカーボックスのようになるのか反響して大きく響き、出してくれとでも言っているように盛んに鳴き続けます。
次の日の明け方には、コケコッコーとともに、前日に作ったらしい餌入れの容器を、餌の催促でコツコツと突付く音がさらに加わりました。

一応3日間は、我慢できるものかと様子をみたのだけど、とうとううちのアパートの大家さんに相談して、何とかしてくれるように言ってもらいました。
夕方、仕事から戻ってみると、小屋には白いビニールのカバーが掛けられていて、アレ、これでは音は遮断されないだろうと思ったのだけど、当然翌朝には、遠くで聞こえる他のニワトリの鳴き声に呼応して、変わらぬ音量で聞こえてきます。

これには大家さんも怒って、役所に電話すると言ってくれました。
しばらくして、うちの大家さんにひけを取らないごっつい体格の、制服を着た女性2人が来て、飼い主のフィリピン人に、持ってきた書類にサインを迫っていました。
それで小屋が撤去されるのかなと思っていたら、その場で中のニワトリ3羽を取り出して、紐を付けて、まるで犯罪者を引きたてるようにして連れて行ってしまいました。
ニワトリには罪はないと思うのだけど・・・・