2006年6月
南十字星とすばる

南の島の定番、南十字星も案外知られていないのが位置と見れる時間帯。
訪れた地で、季節や時間を考えながら探してみるのも楽しみの一つかもしれません。

昔から航海者を導き、南の国へのあこがれをさそう南十字星は、私も4年前に石垣島を出発して2週間の行程でパラオに向かっていた時に、暗くなって星が見え始めた頃に、ほぼ真南に向かっている舳先の正面に南十字星があって、手元のコンパスを見なくても針路がわかった経験があります。

現在の航海では、揺れるヨットの上で太陽の水平線からの高さを正確に測って、複雑な計算をして現在地を出す天文航法を使うこともなく、GPSで衛星からの電波を受信することで、正確な位置が簡単に出せるようになったのですが、やはり今でも、南十字星だけは航海者だけでなく、旅の人の星空の夢を馳らせます。

その見つけ方は、まずコンパスで南の方角を見つけて向かいます。
ただし、決まった位置にあるのではなく、時間によってかなり東寄りだったり、西だったり、形も単純であるがために向きが変わっていたりすると、たとえ以前に見たことがあっても探せないこともよくあります。
その動きを知るのには、単純な天体の動きのパターンを研究することで、何月何日の何時頃にはこのあたりにというのが分かってきます。
簡単ではあるのに以外に複雑なのでその暇がない人には、早い話が地元の知っている人に聞くのが一番です。

もう一つの夜空のロマン、すばる。
日本でも条件さえよければ見れるのだけど、聞いたことはあっても、知らない人も多いはずです。
すばるは星座ではなく、単体の星の名前でもなく、プレアデス星団とも呼ばれる、いくつかの星が小さく集まっているもので、東京のようなネオンの輝く明るい空では見えません。
また空気のきれいな所でないと、雲のようにしか見えなくて、眼が良い人だと肉眼でも確認できるのですが、双眼鏡を使うと星がゴチャゴチャと塊っているのがもっとよくわかります。

天体は一日をかけて地球を回っているので、半分は昼間で夜に星の全体の半分しか見ることができません。
暗くなった頃、東の空に見えていた星は夜半に真上になり、明け方には西に見えています。
それですばるは、南十字星と東西に分けた対極にあるので、南十字星が見えている時期と時間には見ることができません。

すばるは澄んだ夜空であれば、星座にあまり詳しくない人でも比較的簡単に見つけることができます。
パラオではぐるっと空を見渡して、もし西の水平線近くにすばるを見つけたら、少し時間が経って沈んでしまった頃、南東の方角から南十字星が上がってくるので、少し待ってみましょう。
もし、どんなに探しても見つからなければ、もうすでにどこかに南十字星が見えているはずです。