2006年9月
オーバーホールとスーパーメカニック

8月にNAKIRI号では初めての、エンジンのオーバーホールを行いました。
自分で簡単なメンテナンスは出来ても、VOLVOのスウェーデン製のエンジンを完全分解するとなるとパラオでは無理なのかなと思っていたのですが、人聞きに、日本人のメカニックでパラオにもう40年位住んでいる伝説的なスゴイ人がいることを知り、相談に行くと、
簡単にOKが出て「これとこれを用意しておいて」次の日の朝にということになりました。

自分で想像していたのは、200Kgもあるエンジンで、しかも漁船などと違って船内の奥底にあるので、クレーンを手配したり、デッキに穴をあけて運び出したりしなくてはいけないと思っていたので、エッそれでいいの?運び出すのに何日かかるの?といった感じでした。

推定年齢70歳位、身長150cm位のコンパクトな体型は私では入りきらない狭いヨットのエンジンルームにすっぽりと潜り込んでしまうし、私の想像もしなかった段取りであの重いエンジンを床の上まで上げてしまい、その場で分解を始めて、人の手で運べるくらいの重さごとの塊にしてその日の内に彼の自宅兼工場に運び出してしまったのには驚いてしまいました。
次の日から何日間か一緒に、パーツの一つ一つを掃除をしながら分解していく作業に行動を共にしていると、前記の伝説的ということがよく分かってきました。

まず、彼のペースというものがあって、二人がかりで作業をしていると「あせったらだめ、あせったら怪我するよ」これが口癖で、作業が遅いわけではないのだけど黙々と、ある日は朝7時半から始めて、午後2時まで昼食どころか水を飲む休憩もまったく取らずに作業を続けます。
手元の細かい作業をする時にも腰掛けを使わないで中腰のままで、私などは同じように中腰でいて、10分くらいで立ち上がろうとするとめまいがしてしまいます。

そこに時々パラオ人がやってきて、船やパラオ政府の発電機のエンジンの修理などを頼むのだけど、気に入らないと後ろを振り向きもしないし、たまに英語の単語を使ってもほとんどが日本語でとおして、パラオ人の日本語の理解力もすごいけど、それでよく話が通じるなと感心してしまいます。
私とも沖縄の言葉なので、三分の一はよく聞き取れなくて必死に想像を働かせながら会話をしています。

漁船の修理依頼はグアムからもきて、出掛けていているようで、よくこんな腕のいいエンジニアがパラオにいたものだと幸運に思ってしまいます。
故障したパーツは「元々材質が弱いから壊れてしまうんだ」、と言って替えの新品を使うのではなくて、自分でもっと丈夫な物を作ってしまいます。

今でも時々エンジンのことを聞いたり、庭に生っているパラオレモンや椰子の実をもらいに行ったりしています。

パラオのこんな小さな所にもまだまだスゴイ人がいて、近いうちにまた紹介する予定です。